お布施には「読経料」や「戒名料」などが含まれており、その名の通り読経や戒名のお礼としてお坊さんに渡すものですが、お布施はお坊さんへの報酬というわけではありません。
本来はお坊さんを通じてご本尊にお供えするというものです。
そのため、お布施には決まった金額というのが無く、お坊さんにお布施の金額はどのくらい包めばよいか聞くと「お気持ちで」と言われることもあります。
決められた金額というのが無いために、どの程度の金額を渡せばいいのか分からないという人も多く、中にはトラブルになってしまうケースもあります。
地域によって金額の違いはありますが、多くの人はこれくらい包んでいるというお布施の相場があるので参考にするとよいでしょう。
このページでは、地域別で見るお布施の金額の相場や、読経料・戒名料などお布施の内訳について解説します。
お布施の金額の相場

「日本消費者協会 葬儀についてのアンケート調査(2014年)」によるとお布施金額の全国平均は約45万円となっています。
地域別に見てみると下の表のようになります。
北海道 | 30.8 |
---|---|
東北 | 48.7 |
関東A | 51.5 |
関東B | 55.1 |
中部A | 40.5 |
中部B | 60.1 |
近畿 | 48.3 |
中国 | 32.8 |
四国 | 32.3 |
九州 | 34.3 |
全国平均 | 44.6 |
- 関東A・・・茨城・栃木・群馬・千葉
- 関東B・・・埼玉・東京・神奈川
- 中部A・・・新潟・富山・石川・福井
- 中部B・・・山梨・長野・岐阜・静岡・愛知
ただし、上記の調査結果で少し注意しなければならないことがあります。
日本消費者協会がおこなったアンケートでは、地域によっては10人程度の回答しか得られていないところもあり、平均額を出すための調査対象人数としては少ない人数だということです。
もうひとつは、金額が平均額であらわされているので、極端な話、アンケートで答えたうちの一人が数百万のお布施を払っていた場合に平均額がグッと上がってしまうことになり、多くの人が払っていた金額よりも高い金額になってしまうことがあるということです。
そこで、過去におこなった調査の結果もならべて見てみることで、ある程度の傾向をつかめるようにしたいと思います。
過去3回分の調査結果を下記の表にまとめました。
2007年 | 2010年 | 2014年 | |
---|---|---|---|
北海道 | 54.2 | 46.4 | 30.8 |
東北 | 68.8 | 61.6 | 48.7 |
関東A | 34.1 | 55.7 | 51.5 |
関東B | 68.4 | 46.1 | 55.1 |
中部A | 48.3 | 47.4 | 40.5 |
中部B | 59.7 | 50.5 | 60.1 |
近畿 | 49.4 | 49.3 | 48.3 |
中国 | 41.7 | 67.2 | 32.8 |
四国 | 39.9 | 50.0 | 32.3 |
九州 | 44.2 | 29.6 | 34.3 |
全国平均 | 54.9 | 51.4 | 44.6 |
- 関東A・・・茨城・栃木・群馬・千葉
- 関東B・・・埼玉・東京・神奈川
- 中部A・・・新潟・富山・石川・福井
- 中部B・・・山梨・長野・岐阜・静岡・愛知
こうして見てみると、全体的にはお布施の金額の相場は少しずつ下がっている傾向にあることがわかります。
2010年の中国地方は他の年が30~40万円ほどなのに対して67.2万円と飛び抜けて高額になっていますが、これはおそらくアンケートに答えた人の中に高額のお布施を支払った人が居たために、この年の中国地方の平均額が大きく上がったのだろうと予測できます。
地域ごとの傾向を見てみると、東京や名古屋などの大都市圏では高額になるということ、北海道や中国、四国、九州などの地方では低めの金額になるということが見てとれます。
ただし、大阪は他の大都市と比べると低め、東北では大都市と同じかそれ以上に高額になることもあるようです。
地域別に見てみると、東北・関東・中部・近畿では50万円前後、北海道・中国・四国・九州では30~40万円前後というのがお布施の妥当な金額ではないでしょうか。
また、お布施の金額は地域による違いの他にも、お寺の格式、本人(遺族)の経済状況やお寺との関係などによっても違ってきます。
読経料・戒名料・お車代・御膳料
上記の日本消費者協会が調査した金額は、お布施(読経料、戒名料)の他に、お車代、御膳料を含んだ寺院への費用の総額になっています。
それぞれ、以下のような内容と金額になっています。
お布施の金額の内訳
読経料(どくきょうりょう)
読経料は通夜や告別式、火葬場などで儀式としてお経を読んでもらうことに対するお礼としてのお金になります。読経料の相場は地域によっても変わってきますが15万円~30万円ほどです。
戒名料(かいみょうりょう)
戒名料とは、仏の弟子になったことを意味する名前である「戒名」をつけてもらったことに対するお礼としてのお金になります。
戒名には位(ランク)があり、一般的な戒名であれば15万円~30万円ほど。位の高い戒名になると100万円以上になることもあります。
この戒名料が高額になる人もいるため、人によってお布施の金額に大きく開きがあるものになっていると言えます。
戒名については下記ページをご覧ください。
お車代
お車代はお葬式を行う斎場や自宅に来ていただいた際の交通費として渡すお金になります。
移動距離などを考慮して5,000円~1万円程度になります。
御膳料
御膳料(おぜんりょう)は、お坊さんが通夜振る舞いや精進落としなどを辞退する場合に食事のかわりとして渡すお金になります。金額は1万円程度です。
お布施の金額に迷うようであれば・・・
お布施の金額をなかなか決めれない。金額が少なすぎないか不安だという人もいるかと思います。
そのような場合は思い切って、「いくらお包みすればよろしいでしょうか?」とお坊さんに直接聞いてみると答えてくれることもあります。
お寺によってはもともとお布施の金額に規定をもうけているところもあります。
お坊さんに直接聞くのはちょっと・・・という場合や、お坊さんに聞いたけどはっきりとした金額を答えてくれなかった、または通常よりも高額な金額を言われた場合などは、そのお寺の檀家総代(お寺の檀家の代表)に相談してみるというのも良いでしょう。
それ以外では、葬儀屋に聞いてみるという方法もあります。
その地域に詳しい葬儀屋であれば、どのくらい包んだら良いかを丁寧に教えてくれるでしょう。
お布施を渡す準備をする
お布施の金額が決まったら、お布施を封筒に入れて表書き・名前を書きます。
お布施の書き方や渡し方のマナーなどについては下記ページをご覧ください。
これまでに、「葬儀一式費用(葬儀プランの費用)」と「飲食接待費(通夜振る舞い・精進落とし・返礼品)」、そして今回の「寺院への費用(お布施・お車代・御膳料)」というように、お葬式で出ていくお金について解説してきましたが、お葬式では入ってくるお金もあります。
次回は、香典収入の相場について解説します。